ヘルシンキのカフェで

ヘルシンキのカフェで

先月ヘルシンキでお会いした方とは、2018年にプラハのアンティークショップでばったり出逢った。その後、彼の同行者だった人とは、柴犬と共に暮らしているという共通点もあって時折メッセージを交わしていたが、彼とはまったく交流はなく、かれこれ40年ほどフィンランドで暮らしている方だという以外、わたしは彼について何も知らなかった。

今回初めてゆっくりお話をして、彼が一時期京都大丸に勤務していたことを知った。同じ時期に、わたしは大学生として京都大丸の近所に住んでいて、高島屋でアルバイトをしており、卒業後も近くで働いていた。わたしたちは「きっとどこかですれ違っていたはずですね」と笑った。ヘルシンキのカフェで、30年近く前の京都の街並みや生活が記憶の中から蘇るおもしろい時間だった。

彼は20代前半に貨物船で欧州へ渡り、あちこちで働きながら長らく転々とした後、条件が偶々一致してフィンランドに定住することになったそうだ。「当時はロンドンに住みたかったんだけどね」と言っていた。わたしも「ポルトガルへまた行きたい」などと言っていたはずが、あれよあれよという間に条件が整って、急流に運ばれるようにチェコで暮らすことになったので、わかる気がした。

彼はわたしの親よりも少し年上で、革命以前のチェコスロヴァキアも何度か訪れたそうだ。まだチェコスロヴァキアが共産主義体制下にあった頃、彼は一時期ウィーンで働いていたことがあり、特に印象に残っているという当時同僚だったチェコスロヴァキアの人たちのエピソードを聞かせてもらった。

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