チェコ共和国のペトル・パヴェル大統領が姫路城を訪問し、彼の立ち会いのもと、姫路城とプラハ城との間に姉妹城提携が締結されたそうだ。
姫路城の近くで生まれ育ち、現在はチェコに住んでいる私にとって、これはなかなか奇遇で嬉しいニュースだ。もし私の母や彼女のパートナーがまだ生きていたなら、パヴェル大統領の訪問も、姫路城とプラハ城の姉妹協定締結も、きっと喜んだことだろう。
虐待と依存の連鎖から逃れるため、大学進学を機に故郷を離れて以来、再びあの街で暮らすことはなかった。しかし、約20年をかけて自分自身を回復し、母との関係の再構築に取り組み、最終的に彼女の死を見届けてからは、故郷に対する印象も変化した。今となってはあの街は、強い愛着はないけれど、多くの思い出が残る懐かしい場所だ。
幼少期に母と暮らしたアパートからはいつも城が見えていた。通っていた中学・高校は城のすぐ隣にあったので、通学時には常に城が視界に入っていた。あまりに日常的な光景だったので、これまで強く意識したことはなかったけれど、現在住んでいる国の城とあの城との間に特別なつながりが生まれたのは、喜ばしいことだ。
40歳の頃、日本での生活が限界に達して全てを諦めた後、思わぬ出会いに運ばれてチェコにたどり着き、いくつもの偶然を経て、この国で働き暮らすことになった。大きな意図の通りではあるのだろうけれど、私という小さな自我の思いを超えて今ここにいる。そして時折こんな風に、そのことを振り返る機会がもたらされる。