彼/彼女という第三人称
職場のメンバーと言語について話していたら、一人がわたしに「なぜ日本の人は、英語の会話の中でよくhe/himとshe/herを間違えるのか」と尋ねてきた。実際にわたしも、自分では「彼女が」と言ったつもりが「he」と口にしていて、会話の最中に指摘されたことがある。 それで思い出したのは、日本で母を含めて数人で話をしていた時のことだ。母について何かを尋ねられたわたしは、隣にいた母を示しながら「彼女は~」と説明しながら、ふと「日本語の会話ではこういう呼び方はあまりしないかもしれない」と感じた。 「彼/彼女」という日本語の人称代名詞は、書き言葉では目にするけれど、会話の中で使われることは少ない。 さらに同じ同僚から「では、日本語では『彼/彼女』という言葉を使わずにどうやって会話が成立するのか」と尋ねられた。多くの場合、固有名詞(名前)または肩書・役割名が用いられるか、場合によっては指示代名詞が使われている。そして、主語や目的語が完全に省略されることも少なくない。 もしかしたら、そういった母語(日本語)の特徴が、わたしをはじめ日本語話者が英語会話の中でheとsheを無意識に混同してしまう原…