城の近くの坂道でこの世ならざる者たちのことを思う
昨日もまた仕事帰りに坂道へ出向いた。プラハ市内で坂道があるエリアといえば丘の上に建つ城の周辺だろう。普段は利用しない路線で向かおうと、職場近くの停留所からバスに乗ってマロヴァンカヘ向かい、そこから22番トラムに乗ってケプレロヴァ(ケプラー通り)へ。ティコ・ブラーエとヨハネス・ケプラーが並んで空を見上げる銅像を横目に見ながら城の方へと坂を下った。 城の周囲を歩くのは久しぶりだ。観光客が集まる昼と、人が少くなる夜とでは、あたりの気配がまるで異なる。夜にこのあたりを歩くのは楽しい。昼間は姿を隠しているこの世ならざる者たちが顔をのぞかせるような気がする。もしかしたら、角を曲がったところで妖怪とばったり出くわすかもしれない。そんなことを思いながら、長らく空き家だらけとなっているアーケードや、廃墟化しているアパートの窓を覗きこんでみる。そういえば、錬金術博物館のそばの16世紀に建てられた家に住んでいる人が「うちにも幽霊は出るよ。たいてい台所に現れる。うまく一緒に暮らしているよ。この辺では当たり前のことだ。」と言っていた。 わたしがまだ日本とチェコを行き来していた頃、やはりマラー・ストラナ地区…